ひかり会の定例会(1・29)でお話ししたこと

狭山ひかり幼稚園

越後の山(スキー場のこと)から出した園児たちのハガキは、もう着いた頃でしょう か。「パパママおげんきですか?」(7時間前に別れたばかりなのに)、「パパあそんでくれてありがとう」。Mちゃんはハガキいっぱいに家族のみんなの顔を描いていました。 それぞれ思いが込められていますね。

風呂上がりの礼拝では、「頂きます」「ご馳走様」の言葉の意味をお話ししました。同時に日本が、食事の作法として大事にしてきた箸の使い方を話しました。それなりに通じたかなと感じています。

一昨日のことです。ある見学者が、「幼稚園でこんなに遊んでばかりでは、小学校に行ってから困ることになりませんか?」「この園に来ると、うちが行く小学校にはただ一人だけになります。とても心配です。」・・・これは時に出てくるもっともらしい質問です。でも実際にそのことで困ったという話を聞いたことはありません。

むしろ新「教育要領」が明記するように、「幼稚園教育において育みたい資質、能力」(第1章総則。第2「3つの柱」)は、

  • 豊かな体験を通して、感じたり、気づいたり、分かったり、できるようになったりする。「知識及び技術の基礎」
  • 気づいたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする。「思考力、判断力、表現力の基礎」
  • 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性など」

としています。人の一生を支える力、学力、資質、能力、学びに向かう力、思考力、 判断力・・・そのものを、ひかりはずばり育てていると言えるのです。

さる1月26日入間市の小学生による「かるた大会」が、武道館で開かれました。各子ども会、小学校から勝ち抜いてきた小学生が一堂に集まり、県大会を目指して戦いました。勝ち上がってきた参加者の中に、何とひかりの卒業生が9人、しかも上学年に混ざって、4位に食い込んだのは4年生のMHさんでした。これは特筆すべきことではないでしょうか。

ノーベル賞を取ったアメリカの経済学者、ジェームス・ヘックマンは、「5歳までに人の一生を支える基礎は決まる。学校に行ってからではもう遅い」と言い、育ちの3要素として「意欲、忍耐力、協働性」を挙げています。入間市のかるた大会がこれを証明しているように思います。

これにはお父さん、お母さんたちの頑張りがものを言っている面があるようです。 かるた大会もそうですが、1月31日年長さんを引率して入間川小学校を見学し、授業を見たり、給食の体験をさせていただきました。本館2階の階段を上がったところ に、「学校支援ボランティア一覧」が、大きな顔写真入りで掲示してあります。全部で96人ですが、その中にひかり卒園生のお母さん(お祖父さんも一人)が25人、全校生徒の人数からいうとひかりの卒園生は4%か5%くらいなのに、ここでは26%強を占めています。市立西中学校のPTA本部役員は半数がひかりの保護者達ですし、西武小には毎年一人か二人しか行かないのに、ひかりのお父さんが2人です。

これは、どの学校においてもほぼ同じ傾向です。PTA連合会の役員会で顔を合わせてみると「あら、お久しぶり。お元気?」―そんな挨拶が飛び交うのです。昨秋小学校の運動会に行くと、大勢のお母さんが「学年委員」「広報委員」「本部役員」の名札をぶら下げておられました。いま県立川越高校の1年と3年の PTA学年委員長は、ひかりのお母さんです。

「その小学校に一人しか行かない」のは、お母さんにとって心配かも知れません。でもひかりで2年、3年育った人は、そんなにひ弱ではありません。一人だからこそたくさん話しかけ友達を作ることができるのでしょう。そのためにはご両親が学校教育に関心を持ち、お母さんが回りの人たちと豊かに交流していることが大切と思います。

昨年10月に入間、狭山の7つの小学校の運動会を見学しました。そのうち2つの学校の校長さんが、私にくっついて来た児童の顔を見て、「えっ、こんな子どもたち(優秀な)が集まっている幼稚園ですか?」と感嘆の声を上げられました。その通り、もともと素質のある優秀な人たちが集まっているのだろうと思います。

でもヘックマンが言う通り、5歳までの育ちがしっかりしていれば、心配しないどころか、あとはうんと期待していてほしいと思います。

彼は人生の基礎は5歳で決まると言っています。そこで将来の学力、収入、社会的地位が決まると喝破しています。大げさな気もしますが、実はミシガン州で質の高い幼児教育に基づいて、40年間彼らを追跡し、調査・研究をしてこの結論に達し、ノーベル賞を取ったのです。これは全世界に衝撃を与えました。そしてこの研究が、今年10月から始まる日本の「幼児教育の無償化」を実現するきっかけになったのです。

東 喜代雄