雪を悦ぶ

園長 東 晴也

昨日から降った雪で、今朝の園庭は真っ白の雪景色。先生方は、朝早くから園の玄関や駐車場の入り口付近、そして歩道の雪かきをして汗を流しました。

テレビでは昨夜から、大雪を警戒し、走行・歩行を注意する報道がひっきりなしに流れていましたね。私は、元雪国生活者なので、雪の怖さはよく理解しているつもりです。生徒が軒下で雪かき中に、屋根から落ちてきた雪に埋まり、懸命に救い出したこともありました。重たい雪は、1㎥で1tあるそうです。屈強な高校生でもびくともしない重さがあります。

でも、今朝、登園してきた子どもたちは本当に嬉しそうでしたね。ほとんどみんな外に出て、雪遊びを満喫しました。今日の私は、何度、子ども達の雪合戦の標的になったことか!
「ダンプえんちょう、やっつけろ!」(という絵本があるそうなのですが、)のかけ声とともに、雪だまを超至近距離から何発も投げられるのですね!(*写真)楽しかったです。
年少組のAさんは、わざわざ私に、
「ゆきのうえにねころんでくるー」とだけ言って、園庭のど真ん中に、大の字になって本当に寝転んでいました!(*写真)。Aさんは、水たまりに手をついただけで、泣き出すほど泣き虫です。でも、今日はなぜか違いました。

宮澤賢治の童話に『雪渡り』があります。凍(し)み雪(早春の早朝、雪面が夜の寒さでガチガチに凍った状態)の朝、幼い兄妹(四郎とかん子)が堅雪の上をどこまでも散歩していると狐の紺三郎と出会って、仲良しになるのです。嬉しい紺三郎は、狐の「幻燈会(げんとうかい)」に誘うのですが、兄たちと一緒に行きたい四郎は、「兄さんたちは十一歳以下ですか?」と紺三郎に尋ねられて、結局12才以上の兄達は断られてしまいます。作品の中には書かれていませんが、宮澤賢治という人は、“自然の神秘とコンタクトできる条件”をもっているようです。それは幼さ、童心のようなものだと思うのです。この作品の場合は、11才までの子どもが「幻燈会」に参加できるとしています。

雪を注意警戒の対象として無い方が良いとする現代の都会的大人社会の対局に、雪を楽しむAさんはじめ園児の皆さんや『雪渡り』の四郎とかん子がいるように感じるのです。自然の豊かさも怖さも、私達人間は受け入れるしかないわけですが、警戒し嘆くだけではなく、自然に感謝し、喜ぶ感覚も持ちあわせていたいと思いました。
あの後、Aさんは、ソリをもって来て、それに自分が乗り、ソリのロープを私にそっと手渡して、「ひっぱって!」だそうです。一緒に遊んでくれて、どうもありがとう笑。

(2024.2.6)

*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日にあった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。