園長 東 晴也
先日、電話を受けた職員が受話器をもったまま、「ちょっと変わった電話です……」と、妙な顔つきで、私に告げるので、私も少し構えてお話をうかがいました。
お話を聞いてみると、その方は、1990年代にひかりを卒園された卒園生で、現在神奈川県にお住まいのKさんという方でした。在園中から、幼稚園の先生に憧れて、自分は幼稚園の先生になるものだと迷わず保育科のある短大に進学し、卒業後は保育の現場に20年以上勤められたそうです。しかし、今は保育の現場を離れ、児童書に関わるお仕事をされているとのことでした。
Kさんは、先日F館の絵本のお仕事をしているとき、ふとひかり幼稚園のことを思い出し、なつかしい気持ちが溢れてきたというのです。それで、「ご迷惑かと思いましたが、なつかしくて電話してしまいました。……すみません」とおっしゃるではありませんか。
私は、卒園後、長い時間を経ても、「なつかしいと思っていただけることは嬉しいです」と感謝を申し上げました。それ以上に、ひかりを懐かしむだけではなく、思い切って電話して下さった行動力は、さすが卒園児だなと感心したのです。懐かしい対象に思いを寄せ、しみじみ思い出すことも素晴らしいことですが、その思いを今のひかりの職員、園長に伝えようとして、電話してくれるなんて凄い勇気ですよね。
私は、その電話の最後に、Kさんに、
「幼稚園で特に印象に残っていることって、何ですか?」と聞いてみました。するとKさんは、すぐに
「お泊りのときに木の棒の先にパンを巻いて焼いたこと、キャロリングをしたこと、くじゃくの世話をしたこと、讃美歌を歌ったこと、工作で椅子を作ったこと……」
と、溢れるように語ってくださいました。工作でイスを作るって、そんな時代があったのですね。
Kさんとの電話を切ったあと、私の心に何か温かいものを感じました。
私は、ひかり幼稚園の卒園生一人ひとりが、自分の心に溢れてくる感情を素直に味わい、
勇気もって、正直に他者と対話することができる自立した大人になってほしい。現に、そ
うされているお一人と出会えたような気がして、とても嬉しかったのです。(2025.12.8)
*「『園長!』の写真日記」は、ひかり幼稚園在園児及びそのご家族を念頭に、その日に
あった出来事を写真と共に振り返りつつ、執筆するものです。




